「今までトイレで排泄していたのに、突然粗相(おもらし)をするようになった」というとき、どうすれば良いのかわからずに悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。
今回は、猫が突然粗相するようになった原因や動物病院へ行くべき症状、対策方法について詳しく解説します。
粗相を繰り返さないように、きちんと原因に合わせた対策をしてあげましょう。
牧村 さゆり
日本大学 生物資源科学部 獣医学科 卒業
神奈川県、沖縄県、東京都の動物病院に勤務
現在は埼玉県の動物病院に勤務する傍ら、東京都にて往診専門動物病院を開業
- 猫が突然粗相をするようになった理由:ストレス、トイレ環境や設置場所の変化、老化、発情
- 病気が原因で粗相をする可能性・猫が粗相した場合の対策方法
猫が突然粗相をして困った経験がある人は約7割!
Q.猫が突然粗相(おもらし)するようになった事はありますか? | 計100人 |
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ある | 69人 |
ない | 31人 |
猫に突然粗相をされた経験のある人がどのくらいいるのか、猫を飼っている人100人を対象に調査したところ、なんと約7割以上の飼い主が「経験がある」と回答しました。
では、実際に猫が粗相をした際、どのように対処したのでしょうか?
猫が突然粗相をするようになった際どのように改善したの?
Q.猫が突然粗相をするようになった際どのように改善した? | 計69人 |
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トイレの場所を変えた | 14人 |
トイレの砂を変えた | 10人 |
トイレをこまめに掃除した | 10人 |
トイレを増やした | 10人 |
何もしなかったら自然に改善した | 9人 |
トイレの大きさを見直した | 7人 |
獣医師に相談した | 5人 |
未だ改善していない | 1人 |
1日に何回もトイレに連れて行った | 1人 |
トイレトレーニングをやり直した | 1人 |
猫が気にしていたカーテン(サイズ合っておらず、床についてしまっていた)だったので、カーテンを床につかない様にしたら無くなった | 1人 |
猫の粗相を改善する際の方法として「トイレの場所を変えた」という回答が最多でした。
トイレ以外の場所で粗相をしてしまうことにより、粗相をした場所をトイレだと勘違いしてしまう猫も多いようです。
次に、「トイレの砂を変えた」「トイレをこまめに掃除した」「トイレを増やした」という回答が多く見られました。
中には「何もしなかったら自然に改善した」という回答もあり、一体どのように対策を取るのが良いのか難しいところです。
獣医師に確認したところ、猫が突然粗相するようになった場合は、原因別に対処していくことが望ましいとのことでした。
次章からは猫が突然粗相をするようになった原因について見ていきましょう。
猫が突然粗相をするようになった原因は?
猫が突然粗相をするようになったときは、どのような原因が考えられるのでしょうか。
ここでは、代表的な原因を4つ紹介します。
ストレスによるもの
猫が粗相をするときは、ストレスを感じているサインかもしれません。
猫は環境の変化がストレスになりやすく、引っ越しやリフォーム、家具の配置の変化などをきっかけに粗相をすることがあります。
他にも、雷や工事などの大きな音、来客、赤ちゃんや新しいペットの登場、フードを変えたなど、さまざまなことがストレスの原因になります。
トイレの環境や設置場所が気に入らない
猫は綺麗好きなので、トイレが汚れていると他の場所に排泄してしまうことがあります。
トイレの設置場所が気に入らないときや、他の猫のニオイがついているときも粗相しやすく、使っているトイレ本体や砂の使い心地が悪いことが原因の場合もあります。
老化によるもの
高齢の猫の場合、老化による筋力の衰えにより、トイレに行くのが間に合わなかったり、トイレの縁を跨げなかったりして粗相をしている可能性があるでしょう。
とくに、足腰に痛みがあると、トイレまでの移動や出入り、排泄するときの姿勢が苦痛になり、トイレ以外の場所で粗相することがあります。
老化による認知機能の低下から、トイレの場所がわからなくなっていたり、尿意に気づいていなかったりしている可能性も考えられるでしょう。
発情によるもの
猫は発情すると、おしっこを吹きかけるマーキング(スプレー行動)を行います。
マーキングは、立ったまま垂直面にニオイの強いおしっこをするのが特徴です。
発情期で自分の存在をアピールする他に、縄張りを守る、不安を解消するといった意味もあり、室内では家や部屋の入り口、通路、家具、新しい物などにすることが多くあります。
マーキングをするのは主にオス猫ですが、メス猫も行います。
とくに、去勢していないオス猫や、避妊手術をしていないメス猫が行うことが多いです。
病気が原因の場合も!動物病院へ行くべき症状
猫が粗相するようになったときは、病気が原因となっている可能性もあります。
【粗相を起こしやすい病気】
病気名 | 原因 | 症状 |
---|---|---|
下部尿路疾患 (FLUTD) | 尿路結石、尿路感染症、特発性膀胱炎、膀胱周辺の腫瘍、尿路の構造異常、ストレス、食生活、生活習慣、水分不足 | 頻尿、血尿、排尿時の力み、排尿時の痛み、下腹部をなめる、トイレ以外の場所で排尿する、落ち着きがない |
急性腎臓病 | 結石などによる尿道や尿管の閉塞、感染症、中毒、脱水、心臓病 | 元気がなくなる、おしっこの量が極端に減る、食欲不振、下痢、嘔吐、脱水症状、痙攣、体温低下、排便や排尿の粗相 |
慢性腎臓病 | 細菌やウイルス感染、外傷、薬物中毒、腎血流量の低下、免疫疾患、加齢 | 水をたくさん飲む、体重減少、食欲低下、色の薄い尿をたくさんする、活動的ではなくなる、嘔吐が多くなる、口臭がする、便秘、被毛にツヤがなくなる、排便や排尿の粗相 |
糖尿病 | インスリンの不足や効果の低下(肥満、加齢、膵炎、ステロイドの長期間投与、ストレスなど) | 多飲多尿、食欲旺盛、体重減少、毛艶が悪くなる、疲れやすい、かかとをつけて歩く、白内障、排便や排尿の粗相 |
認知症 | 老化による脳や自律神経の衰え、脳の病変(アルツハイマー病など)、高血圧 | 食べ物の好き嫌いが変わった、トイレ以外の場所で粗相をする、夜中に大きな声で鳴く、同じ場所をうろうろする、食事をしたのにまだ食べようとする、名前を呼んでも反応しない、凶暴になる |
変形性関節症 (骨関節炎) | 加齢、肥満、遺伝、環境、関節の負傷や炎症 | 関節の痛みや違和感、ジャンプや階段の昇り降りができない、動きや活動量の低下、隠れる、グルーミングの減少、触られるのを嫌がる、排便や排尿の粗相、食欲の低下、睡眠時の姿勢の変化 |
猫は泌尿器系や腎臓の病気にかかりやすいため、異変を感じたら早めに獣医師に相談することが大切です。
以下のような症状を伴う粗相があるときは、動物病院を受診しましょう。
- 頻繁にトイレに行く
- トイレに長くいる
- 元気がない
- 食欲がない
- 水をたくさん飲む
- おしっこの量が減る・出ない
- 嘔吐する
- 血尿が出る
猫が粗相した場合の対策方法
ここからは、猫が粗相した場合の対策方法を紹介します。
ストレスを解消してあげる
ストレスが原因の場合は、以下のような方法でストレスを解消してあげるのが効果的です。
猫が快適に過ごしやすいように生活環境を整えてあげると、ストレスを減らせるでしょう。
寝る場所やトイレを清潔に保つ、プライベート空間を作るなどの方法があります。
ストレスの感じ方は個体差があるため、愛猫が何に対してストレスを感じやすいか把握しておくことも大切です。
寂しい気持ちがストレスの原因になっている場合は、猫とのふれあいの時間を増やして、積極的にスキンシップを取ることがストレス解消につながります。
ただし、構い過ぎがストレスになる場合もあるので、猫の性格に合わせてあげましょう。
おもちゃで遊ばせて、運動量を増やしてあげることもストレス解消につながります。
かくれんぼや追いかけっこなど、狩猟本能を満たす遊びもおすすめです。
猫は飽きやすく、やりすぎるとストレスになる場合もあるため、1回の遊び時間は10分を目安にしましょう。
猫は高い場所を好むので、キャットタワーやウォークスルーを設置して、日常の中で上下運動をできるようにするのも効果的です。
トイレ環境を見直す
猫が粗相するときは、トイレ環境を見直してみましょう。
以下のポイントに注意して、猫が快適に使えるようにしてあげることが大切です。
トイレが汚れていると嫌がって使わなくなることがあるため、こまめに掃除しましょう。
トイレを使うたびに排泄物を捨ててあげるのが理想ですが、難しい場合は最低でも朝晩2回は排泄物を取り除いてあげましょう。
トイレ本体の洗浄も定期的に行うことが大切です。
月に1度は重曹やペット用洗剤を使って丸洗いしましょう。
トイレの砂が気に入らないことが原因の場合、砂のタイプを変えてあげると使えるようになる可能性があります。
掃除しやすさや捨てやすさなど飼い主の都合を優先したくなりますが、粗相する場合は愛猫の好みに合わせてあげましょう。
猫が使いやすい大きさや形のトイレを使うのも、粗相を防ぐ重要なポイントです。
猫のトイレの大きさは体長の1.5倍以上を目安に、トイレの中で方向転換できるくらい余裕のあるサイズを選びましょう。
高齢の猫の場合、トイレの縁が低いタイプを選ぶと出入りしやすくなって粗相防止につながります。
トイレの設置場所を変えてみるのも有効な方法です。
食事や寝ている場所から離れていて、人通りが少なく静かな場所に設置してあげましょう。
粗相した場所をトイレと認識してしまっている場合、その場所にトイレを設置すると効果がある場合もあります。
猫が1匹でも、常に綺麗な状態で使えるように、トイレは複数あると良いでしょう。
複数飼いの場合、他の猫のニオイがついているとトイレを使わなくなって粗相をしてしまうことがあります。
トイレの数は猫の匹数+1が理想ですが、状況に合わせて多めに用意しても良いでしょう。
粗相をした場所はしっかり掃除する
粗相をした場所ににおいが残っていると、トイレと認識してしまうことがあります。
猫が粗相した場所をクンクンと長く嗅いでいたり、砂を掻く動作をしたりするときは、排泄してもいい場所だと思っている可能性が高いです。
洗えるものはすぐに洗う、熱湯や漂白剤を水に薄めたもので拭き取るなど、粗相をした場所はしっかりと掃除して、においを残さないようにしましょう。
動物病院で獣医師に相談する
突然粗相をするようになったときは、何か体調に異変が起きている可能性があります。
おしっこのニオイや色、回数、猫の様子などを確認し、普段と違うところがあるときは動物病院を受診しましょう。
他に気になるところがなくても、粗相が続く場合は一度獣医師に相談することをおすすめします。
去勢や避妊手術を行う
発情期によるマーキングが原因のときは、去勢や避妊手術を行うと粗相をしなくなる可能性があります。
マーキングが習慣化する前の若いうちに手術を行うほうが、より効果が期待できます。
ただし、去勢や避妊手術をしても改善しない場合があるので、獣医師と相談して決めると良いでしょう。
猫が自分の縄張りを守るためにマーキングを行なっている場合は、他の猫を縄張りに近づかせない、外の猫が室内から見えないようにするなどの対処法を試してみましょう。
【猫の粗相(おもらし)】獣医師から伝えたいこと
猫の粗相は飼い主さんにとっては困ったトラブルで、できるだけ早く解決したいところですよね。
原因は精神的な問題、身体上の問題に大別されます。
ストレス解消やトイレ環境の整備など取り組みやすいことから試してみて、難しい場合は獣医師にご相談ください。
中には緊急性の高い病気が原因であることもありますので、粗相に加えて元気や食欲の変化に注意し、普段と様子が違う際には速やかに動物病院を受診しましょう。
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