アレルギーはアレルゲン(原因物質)が体の中に入ってきたときに、免疫機能が過剰に反応することでさまざまな症状が起こるものです。
犬のアレルギーには主に『アトピー性皮膚炎』『ノミアレルギー』『食物アレルギー』があり、原因や症状の現れ方、治療法などが異なります。
今回は、犬の3大アレルギーの原因や症状、対処法について詳しく解説します。
石川 愛美
日本獣医生命科学大学獣医学部 卒業
予防獣医療を専門とする動物病院を2019年に開設。
「病気になる前に」をテーマに掲げ、健康寿命を延ばすための活動を実施。
また、事業会社向けコンサルティングや専門学校講師、記事執筆、勉強会等も行っている。
石川先生の監修した記事一覧
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- 犬の3大アレルギー:アトピー性皮膚炎、ノミアレルギー、食物アレルギー
- 各アレルギーの検査や診断方法、原因、症状、治療方法
- 犬のアレルギーを予防する方法:こまめな掃除でハウスダストを除去する、犬を清潔に保つ、散歩コースに注意する
犬の3大アレルギー
犬のアレルギーの中でも発症しやすいアレルギー疾患は、以下の3つです。
- アトピー性皮膚炎
- ノミアレルギー
- 食物アレルギー
アトピー性皮膚炎 | ノミアレルギー | 食物アレルギー | |
---|---|---|---|
原因 | ハウスダスト(カビ、フケ、ダニ、花粉など)に対する過剰な免疫反応、アレルゲン感受性、皮膚バリア機能低下 | ノミの唾液に対するアレルギー反応。体質的要因と繰り返しノミに刺されること | 特定の食物タンパク質など。原因物質は様々で、特定が困難な場合もある。 |
症状 | 強いかゆみ、脱毛、皮膚感染症、色素沈着、外耳炎 | 強いかゆみ、赤み、発疹(背中、腰、お腹、尻尾の付け根、後ろ足など)、脱毛、かさぶた、化膿 | 強いかゆみ、炎症(顔、耳、股の間、背中、肛門周りなど)、消化器症状(軟便、頻便、下痢、嘔吐)、外耳炎 |
検査・診断方法 | 他の皮膚疾患の除外、血液検査(必要に応じて) | ノミ・ノミのフンの確認、皮内テスト(必要に応じて)、他の皮膚疾患との鑑別診断 | 除去食試験、食物負荷試験、アレルギー検査(必要に応じて) |
治療方法 | 薬物療法(内服薬、外用薬)、食事療法、スキンケア、減感作療法、患部保護 | ノミ駆除薬、かゆみ・炎症を抑える治療、ノミ予防薬の継続投与、環境対策 | アレルゲン特定後の食事療法、皮膚症状への薬物療法 |
完治の可能性 | 困難 | 困難(再発しやすい) | 困難(継続的な管理が必要) |
それぞれの特徴も見ていきましょう。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、もっとも発症しやすいアレルギーといわれており、遺伝や環境など複数の原因が関わって発症する病気です。
3歳以下の若い年齢で発症することが多くあり、遺伝的に以下のような犬種に発症しやすいといわれています。
- 柴犬
- フレンチブルドッグ
- パグ・ビーグル
- シーズー
- ヨークシャーテリア
- ラブラドールレトリバー
- ミニチュアシュナウザー
- ウェストハイランドホワイトテリアなど
ノミアレルギー
ノミアレルギーはノミの唾液に過剰な免疫反応を起こし、皮膚炎の症状が現れる病気です。
ノミが活発になる夏〜秋にかけて発症しやすくなりますが、温暖化や暖房の使用などから1年中発症する可能性があります。
ノミの数は関係なく、1ヶ所噛まれただけでも強いかゆみが出ることがあります。
食物アレルギー
食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質に対する過剰反応で、皮膚症状や消化器症状などが現れる病気です。
季節や年齢に関わらず発症するもので、1歳未満から発症するケースも少なくありません。
食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と併発していたり、アトピー性皮膚炎の悪化因子になっていたりする場合も多いです。
【犬のアレルギー①】アトピー性皮膚炎
ここでは、アトピー性皮膚炎の検査・診断方法、原因、症状、治療方法について解説します。
検査・診断方法
アトピー性皮膚炎の診断では、発症した年齢や犬種、症状などを確認し、似た症状のある他の病気を除外する消去法で診断するのが一般的です。
寄生虫や感染症の皮膚疾患、食物アレルギーの関与などを調べて、必要に応じて血液検査を行い、アトピー性皮膚炎と診断されます。
原因
犬のアトピー性皮膚炎は、ハウスダスト(カビ・フケ・ダニ・花粉など)に対して過剰な免疫反応を起こして発症します。
アレルゲンに反応しやすい体質であったり、皮膚バリア機能が低下していたりすることも原因となり、いくつも原因が重なることで発症します。
症状
アトピー性皮膚炎の主な症状は、強いかゆみです。
とくに、耳・顔・足・脇の下・お腹周り・尻尾の付け根などに症状が出やすく、かゆみを我慢できずに、舐めたり引っ掻いたりして炎症を悪化させる場合が少なくありません。
かき壊しによる脱毛、皮膚感染症、色素沈着などの症状が出ることもあり、外耳炎を引き起こして耳の悪臭や炎症が起こる場合もあります。
治療方法
アトピー性皮膚炎の治療は、かゆみや症状を緩和する内服薬や外用薬などを使った薬物治療を行うのが一般的です。
他にも、皮膚ケア用のドッグフードやサプリメントを与える食事療法、薬用シャンプーや保湿剤によるスキンケアも行います。
アレルゲンを少量ずつ注射して慣れさせる減感作療法も治療法のひとつです。
軽度の症状の場合は、エリザベスカラーやシャツ、ソックスなどを着用させて、患部を保護します。
【犬のアレルギー②】ノミアレルギー
ここでは、ノミアレルギーの検査・診断方法、原因、症状、治療方法について解説します。
検査・診断方法
ノミアレルギーの診断では、皮膚の状態を観察したり、ノミ採り櫛を使ってノミやノミのフンがあるか確認します。
ノミの数が少ないと発見できない場合がありますが、ノミの予防歴や生活環境、散歩している場所なども含めて診断します。
また、ノミアレルギーの症状は寄生虫による皮膚炎や皮膚感染症、他のアレルギー性疾患と症状が似ています。
そのため、アレルゲンを皮膚に注入して反応を確認する皮内テストを実施する場合もあります。
原因
ノミアレルギーの症状が出るのは、体質的にノミの唾液にを持っていることが原因のひとつです。
体質的にノミの唾液にアレルギーを持っていなければアレルギー反応は起こりませんが、繰り返しノミに刺されるとアレルギーを発症しやすくなります。
一度発症すると、1回刺されただけでも広い範囲に皮膚症状が現れます。
症状
ノミアレルギーの主な症状は強いかゆみ、赤み、発疹です。
背中から腰、お腹、尻尾の付け根、後ろ足などに症状が出やすく、舐めたり引っ掻いたりすることで悪化して、脱毛やかさぶた、化膿などの症状が起こることもあります。
治療方法
ノミアレルギーの治療では、ノミの駆除薬を使ってノミを駆除し、かゆみや炎症などの症状を抑える治療を行います。
ノミアレルギーは一度発症すると完治するのは難しく、またノミに寄生されると再発するため、定期的に予防薬を投与することが大切です。
また、ノミの卵が毛布やタオル、カーペットなどに付着している可能性があるため、室内の掃除や洗濯、60℃以上の高温乾燥などを行いましょう。
【犬のアレルギー③】食物アレルギー
ここでは、食物アレルギーの検査・診断方法、原因、症状、治療方法について解説します。
検査・診断方法
一般的に、低アレルギー食や除去食を8〜12週間以上与え、症状が改善するか確認する除去食試験を行います。
症状が改善した場合、元のフードに戻して症状が悪化するか確認する食物負荷試験を行い、症状が悪化したら食物アレルギーと診断されます。
必要に応じてアレルギー検査を行う場合もあります。
原因
食物アレルギーの原因となる食べ物には、以下のようなものがあります。
- 牛肉
- 鶏肉
- 卵
- 乳製品
- 穀類(小麦・穀物・大豆) など
添加物もアレルゲンとなる可能性があり、食物アレルギーの明確な原因はわかっていません。
新しい食べ物だけでなく、これまで食べ続けていた食べ物が原因となる場合もあります。
症状
食物アレルギーの主な症状は強いかゆみや炎症です。
顔や耳、股の間、背中、肛門周りなどに症状が現れやすく、軟便や頻便、下痢、嘔吐などの消化器症状も現れます。
外耳炎が併発することもあります。
治療方法
アレルゲンを特定できた場合、その食べ物を含まないフードに変える食事療法を行います。
おやつや人間の食べ物を与えると再発する恐れがあるため、家族にも周知して療法食と水だけを与えることが重要です。
食物アレルギーは完治しないため、療法食を続けていく必要があります。
皮膚症状に対しては、かゆみや炎症を抑える内服薬や外用薬による薬物治療を行います。
犬のアレルギーの予防と対策
ここでは、日常生活での犬のアレルギー予防と対策を紹介します。
こまめな掃除でハウスダストの除去
アレルギーの予防には、こまめに掃除をしてハウスダストやノミなどのアレルゲンを除去するのが有効です。
愛犬が使っている毛布や布団などを定期的に洗濯する、空気清浄機を設置するといったことも発症リスクの低減につながります。
犬を清潔に保つ
定期的にシャンプーをして清潔に保ち、保湿すると皮膚のバリア機能を維持しやすくなります。
犬の肌に合ったシャンプーや保湿剤を使用することが大切なので、獣医師に相談しましょう。
散歩コースに注意する
公園や土手などの草むらには、アレルギーの原因となるノミや植物(ブタクサ・イネなど)が生息していることがあります。
散歩コースに注意して、アレルゲンのある場所には立ち入らないようにしましょう。
他にも、散歩から帰ったらブラッシングをして口周りや手足を濡れたタオルで拭き取り、飼い主の服も払っておくと、家の中にアレルゲンを持ち込みにくくなります。
散歩に行くときは洋服を着せる、汚れやすい毛を短くカットするといった予防方法も有効です。
犬のアレルギーはうまく付き合っていく必要がある!
犬のアレルギーは『アトピー性皮膚炎』『ノミアレルギー』『食物アレルギー』が起きやすく、どのアレルギーも強いかゆみが現れます。
かゆみから体を舐める・噛む・引っ掻く・床に体を擦り付けるといった行動をとることが多いため、このような行動が増えたら動物病院を受診しましょう。
アレルギーは一度発症すると完治は難しいので、症状を緩和させながらうまく付き合っていく必要があります。
最適な治療法と予防・対策法を取り入れて、愛犬が快適に過ごせるようにサポートしてあげましょう。
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