犬に下痢があると、様子を見ていいのか、動物病院へ行くべきか迷ってしまう人が多いのではないでしょうか。
軽度の下痢であれば自宅での対処のみで治る場合もあります。
しかし、「下痢を繰り返している」「血が混じっている」など、症状によって早急に検査や治療が必要となる場合があるので注意が必要です。
今回は、犬が下痢をしてしまう原因、病院へ行くべき症状、自宅でできる下痢の対処法について詳しく解説します。
- 犬が下痢をしてしまう原因:ウイルスや細菌、寄生虫、ストレス、食事、薬、病気
- 病院へ行くべき症状:下痢が3日以上続く、何度も下痢を繰り返す、発熱を伴う、下痢に血便が混ざっている、下痢に加え腹痛や震えがある、元気で食欲はあるが嘔吐する
- 自宅でできる下痢の対処法:安静にさせる、消化の良い食事をさせる、成犬であればご飯をぬく、ストレスを発散させる、薬や病気が原因の場合は医師に相談
犬が下痢をしてしまう原因とは?
犬の下痢には、食事やストレス、病気などさまざまな理由が考えられます。
ここでは、犬が下痢をしてしまう原因を紹介します。
ウイルスや細菌、寄生虫によるもの
犬が下痢をしてしまうのは、ウイルスや細菌、寄生虫による感染症の可能性があります。
下痢を引き起こす感染症の要因には、以下のようなものがあります。
ウイルス | 犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルスなど パルボウイルス感染症やジステンパーウイルス感染症といったウイルス感染症は、ワクチン接種での予防が有効です。 |
---|---|
細菌 | ウエルシュ菌、カンピロバクター、サルモネラ、大腸菌など |
寄生虫 | 犬回虫、コクシジウム、ジアルジア、クリプトスポリジウムなど |
ストレスによるもの
環境の変化やコミュニケーション不足など不安や緊張を感じることがあると、ストレスを感じて、下痢を引き起こすケースも少なくありません。
例えば、ストレスのきっかけとなる出来事には、以下のようなものがあります。
- 長時間留守番をした
- 飼い主とのスキンシップが減った
- 苦手な場所に行った
- 引越しで生活環境が変わった
目をそらす、 あくびをする、足を舐める、舌なめずりをする、顔や体を背ける、小さく震えているなどの行動が目立つ場合は、ストレスサインの可能性があるでしょう。
食事によるもの
犬が下痢を起こす原因には、食事内容や口にしたものなどが関わっている場合もあります。
新しいドッグフードに切り替えたときや普段与えていない食べ物を与えたときなど、愛犬が食べ慣れていないものを口にしたときに下痢になることがあります。
食べすぎると消化不良を引き起こし、下痢になることがあります。
特定の食材を食べたときに下痢をした場合は、食物アレルギーの可能性があるでしょう。
異物を誤食や誤飲すると、下痢を起こしたり嘔吐を伴ったりすることが多いです。
誤飲・誤食は消化器障害や中毒を引き起こす場合があるため、異変を感じたら動物病院を受診することが大切です。
薬の影響によるもの
- 便秘の治療で下剤を使用していて、便の水分量が増えすぎている
- 抗生剤や抗がん剤、抗炎症剤などの使用で腸内に炎症が起きている
- 抗菌剤を使用していて、腸内細菌のバランスが変化している
といった場合、下痢を引き起こすことがあります。
下痢があるときは休薬をする場合があるため、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
病気によるもの
下痢がある場合、さまざまな病気の可能性も考えられます。
下痢を起こすことがある病気には、以下のようなものがあります。
- 消化器官の腫瘍(大腸ポリープ・リンパ腫など)
- 膵臓の病気(急性膵炎・慢性膵炎・膵外分泌不全など)
- 免疫異常による病気(炎症性腸疾患・潰瘍性大腸炎など)
病気が原因の場合は、獣医師の診察・適切な治療が必要です。
病院へ行くべき症状
下痢があるときは、排便状態や下痢以外の症状をよく確認しましょう。
ここでは、病院へ行くべき症状を解説します。
下痢が3日以上続く
下痢が3日以上続くときは、注意が必要です。
とくに、3週間以上続く場合は、感染症や膵炎、腫瘍などの病気が疑われます。
下痢が長く続くと水分や塩分が足りなくなり、脱水症を引き起こすリスクが高まるため、早めに動物病院を受診しましょう。
何度も下痢を繰り返す
何度も下痢を繰り返す場合、食物アレルギーやストレス、感染症、誤飲誤食、内臓疾患などさまざまな原因が考えられるため、検査を行うことが大切です。
水下痢を繰り返す場合は緊急性の高い症状なので、早めに動物病院を受診しましょう。
発熱を伴う
下痢とともに発熱がある場合は、感染症や重度の胃腸炎、膵炎などの可能性があります。
一般的な犬の平熱は38〜39.5℃で、41℃を超えると意識がなくなり、42℃を超えると多臓器不全を起こして命に関わる状態になる恐れがあります。
体温が40℃を超えていて気になる症状があるなら、すぐに動物病院を受診しましょう。
下痢に血便が混ざっている
下痢に血が混ざっている場合、感染症や腫瘍、ポリープ、血液凝固異常といった病気が原因となっている恐れがあります。
嘔吐や元気がないといった症状から始まり、数時間後に悪臭のある血の混じった下痢をした場合は、出血性胃腸炎の可能性が考えられるでしょう。
出血性胃腸炎は急性の胃腸炎で、トイ類、小型犬(ヨークシャー、テリアやトイ・プードルなど)がかかりやすい傾向があります。
急激に症状があらわれ、悪化するとショック状態になって命に関わるので、すぐに動物病院を受診しましょう。
下痢に加え腹痛や震えがある
下痢に加えて腹痛や震えがある場合も、早めに動物病院を受診しましょう。
ソワソワしている、背中を丸めた姿勢をとる、お腹を触ると嫌がる(力を入れる)、お腹に張りがある、じっとして動かないなどの行動があるときは、膵炎の症状に多い腹痛のサインの可能性があります。
元気で食欲があっても嘔吐をする場合
下痢だけでなく嘔吐している場合は、感染症や中毒などの可能性が考えられます。
脱水症を起こしやすく、緊急性が高い状態なので注意が必要です。
元気で食欲があってもすぐに嘔吐してしまうときは、ご飯は与えず早めに動物病院を受診しましょう。
自宅でできる下痢の対処法
下痢をしていても元気で食欲があり、他に症状がないときは、一時的な軽い下痢の可能性が高いです。
自宅でできる対処を行いながら、2〜3日様子を見てみましょう。
ここでは、自宅でできる下痢の対処法を紹介します。
安静にさせる
下痢をしているときは、症状が治まるまで安静にしましょう。
犬を安静にさせるには、ケージやサークルでの休息が効果的。
大きな声や物音を立てずに、穏やかに接することが大切です。
下痢が落ち着くまで散歩は控えるようにしましょう。
消化の良い食事をさせる
下痢をしているときは、胃腸に負担をかけないことが大切です。
ドライフードをふやかしたり、消化の良い食べ物を与えましょう。
犬は人のように食べ物をよく噛んでから飲み込まないため、消化のスタートは胃からとなります。
そのため、炭水化物が多いフードの場合、消化に負担がかかり下痢になりやすくなります。
以下の表を参考にしてみてください。
<高タンパク・低脂質>
食材 | 栄養価 | 注意点 |
---|---|---|
白身魚 | タンパク質、ビタミンD | 加熱して骨を取り除く。生魚は寄生虫のリスクあり。 |
鶏むね肉 | タンパク質、ビタミンB群 | 皮を取り除く。脂質を抑えるため、茹でるか蒸すのがおすすめ。 |
鶏ささみ | タンパク質、ビタミンB群 | 皮を取り除く。脂質が低く、消化しやすい。 |
ラム肉 | タンパク質、鉄分 | 脂質も高めなので、量に注意。 |
サーモン | タンパク質、オメガ3脂肪酸 | 生で与える場合は寄生虫のリスクあり。加熱して与えるのがおすすめ。 |
<食物繊維が豊富>
食材 | 栄養価 | 注意点 |
---|---|---|
かぼちゃ | 食物繊維、ビタミンA | 種と皮を取り除く。加熱して柔らかくしてから与える。 |
さつまいも | 食物繊維、ビタミンC | 皮ごと与える場合はよく洗って加熱する。 |
おから | 食物繊維、タンパク質 | 水分をしっかり絞って与える。 |
キノコ類 | 食物繊維、ビタミンD | 種類によっては消化不良を起こす可能性あり。少量から始める。 |
海藻 | 食物繊維、ミネラル | 適量を目安に与える。 |
<発酵食品>
食材 | 栄養価 | 注意点 |
---|---|---|
納豆 | ビタミンK、タンパク質 | 生で与える場合は、犬が食べやすいように細かくする。 |
甘酒 | 糖質、ビタミンB群 | 無糖のものを選ぶ。少量から始める。 |
ヨーグルト | カルシウム、タンパク質 | 無糖のものを選ぶ。犬種によっては消化不良を起こす可能性あり。 |
チーズ | カルシウム、タンパク質 | 脂肪分が低いものを選ぶ。少量から始める。 |
<消化に良い>
食材 | 栄養価 | 注意点 |
---|---|---|
おかゆ | 炭水化物、消化しやすい | 単独で与えるのではなく、他の食材と組み合わせて与える。 |
成犬であればご飯を抜いて症状が改善するのを待つ方法もある
成犬であれば、12〜24時間程度ご飯を抜き、症状が改善するのを待つのも方法のひとつです。
脱水症を防ぐために水をこまめに飲ませ、絶食後は消化の良いものを少量ずつ与えましょう。
子犬や糖尿病などの持病がある犬の場合は低血糖を引き起こす恐れがあるため、絶食するのはNGです。
ストレスを発散させる
ストレスが原因として考えられるなら、要因を突き止めて解消してあげましょう。
ストレス発散には、運動や遊ぶ時間を増やす、声をかけて撫でてあげる、安心できる生活環境を整えるなどの方法も効果的です。
重度のストレス状態になると、下痢以外に嘔吐や食欲低下、脱毛、震え、異常行動などが起こることがあります。
胃潰瘍や皮膚炎、精神的疾患などの病気を引き起こす場合もあるので、体調の異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
薬や病気が原因の場合は医師に相談する
薬や病気が原因の場合は、獣医師の診察を受けて適切な対処をしてもらう必要があります。
下痢以外に目立った症状がない、愛犬の様子が変わらないといった場合でも、下痢がなかなか治らないときは早めに動物病院を受診しましょう。
犬の下痢は原因別に対処しよう!
犬の下痢はさまざまな原因があるため、原因別に対処する必要があります。
成犬で下痢以外に症状がなく元気があるなら、対処法を実践して2〜3日程度様子を見ても良いでしょう。
ただし、「2〜3日経っても下痢が治らない」「下痢以外の症状がある」といった場合は、早めに動物病院を受診してください。
下痢の原因の中には早期的な治療が必要となるものもあるので、不安があるときは自己判断せずに獣医師に相談することをおすすめします。
動物病院を受診する際は、病気の診断に必要なため、便の写真や便を持参するようにしましょう。
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