「口から腐ったようなにおいがする」

「歯みがきをしているのに、きつい口臭がする」

など、愛犬に口臭がある場合は、口の中や体に異変が起きている恐れがあります。

病気のサインという可能性もあるため、口臭の原因や症状について確認しておきましょう。

今回の記事では、犬の口臭の原因、病気のサイン、対処法について詳しく解説します。

監修医師 Animal Care Clinic TOKYO  院長  石川 愛美
石川 愛美

石川 愛美

日本獣医生命科学大学獣医学部 卒業
予防獣医療を専門とする動物病院を2019年に開設。

「病気になる前に」をテーマに掲げ、健康寿命を延ばすための活動を実施。
また、事業会社向けコンサルティングや専門学校講師、記事執筆、勉強会等も行っている。

<この記事でわかること>
  • 犬の口がくさい原因:口内環境の悪化、内臓疾患によるもの、食べ物によるもの
  • 病院へ行くべき症状:酸っぱい口臭、アンモニアに似た口臭、排便がない、体重減少やよだれの増加
  • 犬の口がくさい時の対処法:歯磨きを習慣化する、定期的に病院で歯石を除去する、内臓疾患が疑われる場合は病院へいく、臭いの強い食べ物を控える、ドッグフードを変更する、食後に水分補給をする、歯石や口臭ケア商品を取り入れる
目次

犬の口がくさいと感じたことがある人は9割越え!

Q.犬の口がくさいと感じたことはありますか?計100人
ある91人
ない9人
※ウィステリア製薬調べ:犬を飼っている人100人にアンケート調査

愛犬の口がくさいと実際に感じたことのある人がどのくらいいるのか、犬を飼っている人100人を対象に調査したところ、なんと9割以上の飼い主がくさいと感じたことがあると回答する結果となりました。

では、実際に口臭を感じた際に飼い主はどのように対処したのでしょうか?

犬の口がくさいと感じた人の多くは口臭ケア商品を取り入れている

Q.犬の口がくさいと感じた人はどのように対処しましたか?計91人
口臭ケア商品を取り入れた32人
歯磨きを徹底した31人
ドッグフードやご飯を変えた11人
何もしなかった7人
食後に水を飲ませた6人
動物病院へ連れて行った3人
歯磨きガムを与えた1人
※ウィステリア製薬調べ:犬を飼っている人100人にアンケート調査

犬の口がくさいと感じた際、飼い主の対応として多かったのが「口臭ケア商品を取り入れた」でした。
次いで「歯磨きを徹底した」、「ドッグフードやご飯を変えた」という結果になっています。

犬の口がくさいと感じた場合、どのような原因で口臭が発生しているのかを知ることが改善への近道です。
一時的な対処はできたとしても、口臭を繰り返してしまったり、悪化してしまったりする恐れもあります。

次章からは原因別の正しい対処法について詳しく説明していきます。

【犬の口臭】口がくさい原因3つ

犬の口臭は、どのようなことが原因で起こるのでしょうか。

ここでは、犬の口臭の主な原因を3つ紹介します。

口内環境の悪化

犬の口臭の原因として考えられるのは、口内環境の悪化です。
口腔ケアが十分でないと歯の表面に歯垢や歯石が付着し、細菌が繁殖して歯周病を引き起こすことがあります。

歯周病になると、歯垢や歯石、炎症による膿が原因となり、腐敗臭のような臭いがします。

犬の口臭は歯周病が原因であることがもっとも多く、3歳以上の犬の場合、約8割が歯周病を患っているともいわれています。

<歯周病>

症状原因進行と影響
・口臭が強い
・歯肉が腫れ赤色になる
・歯肉から出血する
・歯がぐらついたり抜ける
・痛みのため食欲が低下する
・よだれが増える、顔(目の下や頬)が腫れる
・くしゃみ・鼻水が出る
・歯磨き不足
・口の中に食べかすが残りやすいものを常食する
・唾液分泌の減少
・毛づくろいなどで皮膚を舐めた際に細菌が歯周病に関与する
・マズル(鼻周りから口先にかけて)の短い犬種では歯並びが整いにくいため食べかすが残りやすい
▶️初期(歯肉炎):歯肉が赤く腫れ、出血しやすくなる
▶️中期(歯周炎):歯周ポケットが深くなり、歯がぐらつき始める
▶️後期:歯槽骨が溶け、歯が抜け落ちたり、顎の骨が折れることもある。歯周病菌は、血液に乗って心臓や腎臓など、全身の臓器に到達し、様々な病気を引き起こす可能性がある

他にも、口内炎や口腔内腫瘍といった口腔内疾患、口の中の乾燥が原因となり、口臭が発生することがあります。

内臓疾患によるもの

犬の口臭は、胃や腸、肝臓、腎臓など内臓に異常がある場合も考えられます。

口臭が発生する内臓疾患には、以下のようなものがあります。

疾患名原因口臭以外の症状
胃炎・異物の誤飲(おもちゃ、骨など)
・食物アレルギー
・ストレス
・感染症(細菌、ウイルスなど)
・嘔吐(血が混じる場合も)
・食欲不振
・腹痛(おなかを触ると嫌がる)
・だるそうにする
・下痢
・発熱
・体重減少
腎機能不全・老齢
・先天的な腎臓の異常
・腎臓への感染
・腎臓への毒性物質(薬など)の蓄積
・多飲多尿
・食欲不振
・体重減少
・ だるさ
・嘔吐
・下痢
・貧血
肝機能不全・肝炎(ウイルス性、細菌性など)
・脂肪肝
・肝硬変
・食欲不振
・体重減少
・黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)
・嘔吐
・下痢
・腹水(おなかが膨らむ)
・神経症状(ふらつき、痙攣など)
腸閉塞・異物の誤飲(おもちゃ、骨など)
・腸の捻転
・腫瘍
・腸の炎症
・嘔吐
・食欲不振
・腹痛
・便秘
・膨満感

他にも、便秘や糖尿病も、口臭が発生する原因になります。

食べ物によるもの

ドッグフード製品の中には、嗜好性を高めるために、強いニオイを発する原材料や香料が使われている場合があります。

ドッグフードを変えてから口臭が強くなったときは、ドッグフードのニオイが原因となっている可能性があるでしょう。

ドッグフード以外にニオイの強い食べ物を与えているなら、その食べ物が原因と考えられます。

また、開封して時間が経ったドッグフードは、劣化して臭いが変わることがあるため、口臭の原因になる場合があります。

劣化したドッグフードを食べると、健康被害につながるリスクもあるので注意が必要です。

他にも、与えているドッグフードが合っていない場合、消化機能のトラブルを招き、口臭を引き起こすケースもあります。

要注意!病院へ行くべき症状はコレ

ここでは、動物病院へ行くべき症状について紹介します。

酸っぱい口臭は胃腸に疾患がある可能性

酸っぱい口臭がするときは、胃腸に疾患がある可能性があります。

とくに、胃炎を患っている場合は胃酸が過剰に分泌されるため、酸っぱい口臭が出やすいです。

胃腸の疾患があると、口臭の他に、胃液を吐き出す、食欲がない、下痢などの症状が現れることがあります。

アンモニアに似た口臭は腎臓や肝臓に疾患がある可能性

代謝や排泄に関わる腎臓や肝臓の機能が低下すると、老廃物が排出されなくなり、毒素が体の中に溜まってアンモニアに似た口臭が出ることが多いです。

腎臓や肝臓に異常がある場合は、嘔吐、多飲多尿、下痢、痙攣、食欲不振などの症状が現れることもありますが、症状があるときは悪化している可能性があるので注意が必要です。

体重減少やヨダレの増加は糖尿病の可能性

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンが不足したり作用しなくなったりすることで、血液中の糖をエネルギー源として利用できなくなり、さまざまな症状が起こる病気です。

主な症状は体重減少やヨダレの増加、嘔吐、多飲多尿、食欲不振、下痢などで、甘酸っぱい口臭がするのも特徴です。

糖尿病は白内障や内臓疾患など合併症を引き起こしやすく、重症化すると命に関わることがあります。

【犬の口がくさい】口臭予防や対処法

ここでは、日常生活での口臭予防方法や、口臭があるときの対処方法について紹介します。

歯磨きを習慣化する

食べかすが残っていたり、歯垢が付いていたりすると口臭の原因となるため、歯磨きを習慣化して汚れを取り除いてあげましょう。

愛犬のデンタルケアは難しい場合もありますが、少しずつ慣らしていくと歯磨き習慣を作りやすくなります。

【基本の歯磨き方法】
  1. 口周りに優しくタッチする(頭や耳、顔から始めて、触ることに慣れさせるのがポイント)
  2. 口をめくって歯や歯ぐきにタッチする
  3. 歯磨きシートで歯や歯ぐきを優しくこする
  4. 歯ブラシに歯磨きジェルをつけて、軽い力で小刻みに動かして1本ずつ磨く

歯磨き嫌いにならないように、無理強いはせず、少しでもできたらご褒美を与えて褒めてあげましょう。

定期的に病院で歯石を除去する

歯石は歯垢が硬く変化したもので、歯の表面だけでなく歯と歯ぐきの境目にできることが多いです。

歯石の表面は歯垢が付着しやすいため、歯周病の原因となります。

歯石ができてしまうと歯磨きでは取り除けないため、定期的に動物病院で歯石を除去してもらいましょう。

内臓疾患が疑われる場合は速やかに病院へ行く

犬の口臭は病気のサインの可能性があるため、心配なときは自己判断せずに獣医師に相談することが大切です。

とくに、口臭以外に嘔吐や腹痛、下痢などの症状がある場合、内臓疾患の疑いがあります。

深刻な事態を招く恐れがあるため、速やかに動物病院を受診しましょう。

ニオイの強い食べ物を控える

ニオイが強い食べ物が口臭の原因となっている場合は、与えるのを控えましょう。

食いつきを良くするためにニオイの強い食べ物を与えている場合は、

  • 与える量を少量にする
  • ドッグフードを軽く温めてニオイを出す(ウェットタイプの場合)
  • ドッグフードをふやかしてニオイを出す(ドライタイプの場合)

といった方法を試してみましょう。

ドッグフードを変えてみる

ウェットタイプよりドライタイプの方が歯垢ができにくいため、口臭予防にはドライタイプのドッグフードがおすすめです。

歯の健康を守る成分が配合されていたり、歯のクリーニングや唾液の分泌を促す形をしていたりするなど、歯垢・歯石ケアに役立つドッグフードを取り入れるのも良いでしょう。

ドッグフードが愛犬に合っていない疑いがある場合は、かかりつけの獣医師に相談して、与えるドッグフードを見直してみましょう。

食後に水分補給をする

口の中に食べかすが残っていると口臭につながりやすいため、食後は水分補給を促してあげましょう。
口の乾燥も口臭を引き起こす原因のひとつです。

夏場は暑さによって口で呼吸することが多くなるため、水分不足になっていないか、室温が高くないかといった点をチェックしてあげてください。

ただし、犬種によっては食後に大量の水分を摂取することで胃捻転胃拡張症候群を引き起こす恐れがあるので、飲み過ぎには気をつけましょう。

歯石や口臭ケア商品を取り入れる

歯磨きとあわせて歯石や口臭ケア商品を取り入れることも、口臭予防に効果的です。

口の中にいる善玉菌を含むサプリメントは、口臭が発生しにくい口内環境に整えるのに役立ちます。

乳酸菌、オリゴ糖、食物繊維、酵素などの成分も配合されていると消化をサポートするため、胃腸のトラブルからくる口臭予防が期待できるでしょう。

サプリメントの他にも、ミストや歯磨きジェル、マウスクリーナーなどさまざまな商品があるので、獣医師に相談して愛犬に合うものを活用してみましょう。

【犬の口臭】獣医師から伝えたいこと

犬の口臭については、一緒に暮らすご家族が気づいていながらも、「口臭だけで動物病院なんて…」と来院されないケースが多々あります。

犬の場合、1年に1回はワクチン等で動物病院へ行く必要があるため、その時にぜひ口臭について相談してみてください。

ご存知の通り、犬の歯石を取る際、人のように口を開けっ放しにすることが困難なため、たかがスケーリングですが、全身麻酔をかけて歯石取りをするのが一般的です。

どんなに良い子であったとしても、無麻酔のスケーリングでは犬が嫌がって事故につながったり、口の奥の方の歯石が取りきれない可能性もあるためお勧めしていません。

また、上記の通り、口臭の原因は歯周病や歯肉炎だけではありません。内臓疾患があったり、口腔内に腫瘍があったりすることもあります。

このような場合には様子を見ずに早急な処置が必要なケースもあります。

基本的に、全身麻酔には術前の検査(血液検査など)と当日の絶食が必要となりますので、口臭の相談をされたその日に全身麻酔をかけて処置することは、ほとんどありません。

正しい診断と、適切な治療を行うためにも、まずはご不安なことを率直にかかりつけの動物病院へご相談されることをお勧めいたします。

#犬の口臭 #犬の口臭い #犬の口匂い

目次