成長期の子猫は毎日体重が増えて、どんどん体が大きくなっていきます。
体重が増えるのは順調に成長している証ですが、食事や運動量の影響で肥満になってしまうこともあります。
肥満になると全身の病気を引き起こす恐れがあるため、早めに対処しましょう。
また、子猫の体重が増えないときも注意が必要です。
今回は、子猫の平均体重や適正体重、肥満の目安、体重が増えないときや増えすぎているときの対処法などについて詳しく解説します。
岡田 京子
小動物臨床16年、往診による一般診療、終末期医療、オンラインでの診療や相談にも積極的に取り組んでおります。
<経歴> 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科2008年卒業(獣医伝染病学研究室にてFIV.FeLV.FIPについて研究)
金沢医科大学 大学院医学研究科にて医学博士号取得。
兵庫県、石川県の動物病院で勤務。
2021年❝るる動物病院❞ 石川県初の往診専門動物病院を開業。
■代表作・主な実績 MRO北陸放送 レオスタ 2021.6.29 18:15~ / NHK かがのとイブニング 2021.7.1 18:19~ / NHKラジオ じわもんラジオ 2021.9.10 17:00~ / 北國新聞 2021.6.30掲載 / 2022.5.7掲載 富山テレビ 2022.7.14
─現在取り組んでいること 2022年、石川県近郊での野良猫のTNR活動をメインとした施設❝TNRののいちアニマルクリニック❞を開設し、地域猫に対しての活動を開始しました。
他動物病院への疾病コラム提供多数あり。
- 子猫の平均体重:生後0週100g程度、生後1ヶ月約400~500g、生後6ヶ月2.5〜4.0㎏、生後12ヶ月3.0〜5.0㎏
- 1歳あたりの平均体重が成猫の適正体重の目安
- 肥満の基準: 標準体重より120%以上、背骨や肋骨のある部分を触ったときに骨に触れない
- 肥満のリスク:糖尿病、呼吸器系疾患、関節炎などさまざまな病気を引き起こす恐れがある
- 子猫の体重が増えない、増えすぎている場合の対処法:食事量や与え方、フードの種類などを見直す
子猫の平均体重はどのくらい?
猫の体重は品種や性別などによって個体差はありますが、子猫の生後0週〜12ヶ月の平均体重は以下の通りです。
週齢・月齢 | 平均体重 |
---|---|
生後0週 | 100g前後 |
生後1週 | 約150~250g |
生後1ヶ月 | 約350~550g |
生後3ヶ月 | 約1.0~1.5kg |
生後6ヶ月 | 約2.0〜3.0㎏ |
生後12ヶ月 | 約3.0~5.0kg |
月齢ごとの適正体重
ミルクをよく飲んで順調に成長している場合、子猫の体重は毎日10g以上増えます。
体重の増え方は一定ではないため、体重の増え方が大きい日もあれば少ない日もあります。
生まれたときは100g程度しかありませんが、生後6ヶ月で2.0〜3.0㎏、生後12ヶ月で3.0〜5.0㎏に成長するのが一般的です。
平均的な体重目安から大きく外れずに順調に成長しているなら、適正体重が維持できていると考えられるでしょう。
ただし、品種や性別によって体重の増加量は異なります。
体重の変化は個体差が大きいため、数値だけでなくBCSなどをチェックして判断することが大切です。
【成猫の適正体重目安】
生後12ヶ月(52週)頃になると成長が止まるため、1歳あたりの平均体重が成猫の適正体重の目安になります。
主な品種別の成猫の平均体重は以下の通りです。
サイズ | 品種 |
---|---|
小型種 | ・シンガプーラ/2.0~3.5kg ・ロシアンブルー/3.0~5.5kg ・アメリカンカール/3.0~5.0kg |
中型種 | ・アメリカンショートヘアー/3.0~7.0kg ・ペルシャ/3.5~7.0kg ・ヒマラヤン/3.0~5.5kg |
大型種 | ・メインクーン/4.0~10.0kg ・ベンガル/5.0~10.0kg ・ラグドール/4.5~9.0kg |
週齢や月齢ごとの成長の様子
週齢や月齢ごとにどのような変化が起こるのか、子猫の成長の様子もチェックしてみましょう。
週齢・月齢 | 成長の様子 |
---|---|
生後0~1週 | ・目が開いていない ・耳の穴が閉じている ・自力で排泄ができない ・ミーミーと鳴く ・手足をバタバタして動かす |
生後1~4週 | ・目が開いて見えるようになる ・耳の穴が開いて聞こえるようになる ・嗅覚が十分に発達する ・乳歯が生え始める ・よちよち歩きをする |
生後1~2ヶ月 | ・乳歯が生え揃う ・離乳食を食べ始める ・体温調節ができる ・しっかりと歩けるようになる |
生後2~3ヶ月 | ・乳歯が抜けて永久歯が生えてくる ・ジャンプをしたり走ったりして遊ぶようになる |
生後4~5ヶ月 | ・目の色がキトンブルーから本来の目の色に変化する ・乳歯が抜け始める |
生後6~7ヶ月 | ・永久歯が生え揃う ・発情が始まる子が多い(早い子は4ヶ月齢でも発情が起こります。) ・ほとんど成猫と同じ程度に成長する |
【肥満の基準】子猫は何キロからが肥満?
個体差があるので何キロから肥満とは一概には言えませんが、 標準体重より120%以上ある場合は肥満の兆候があるかもしれません。
また、背骨や肋骨のある部分を触ったときに、脂肪がついていて骨に触れない場合は肥満傾向にあることが考えられます。
肥満のチェック方法については、後ほど詳しく紹介します。
肥満になることのリスク
肥満は運動器系、循環器系、泌尿器系、内分泌系など全身に負担をかけるため、さまざまな病気のリスクが高まります。
肥満によって発症するリスクが高まる代表的な病気には、以下のようなものがあります。
疾患名 | 原因 |
---|---|
糖尿病 | 肥満によりインスリンが作用しにくくなり、2型糖尿病を発症する恐れがある |
呼吸器疾患 | 肥満により肺の運動機能が低下し、呼吸器に悪影響を与える恐れがある |
関節炎 | 肥満により体重が重くなると関節に負担がかかり、痛みや炎症、骨の変形などを招く恐れがある |
皮膚病 | 肥満により毛繕いをしにくくなり、不衛生な状態になることで発症する恐れがある |
膀胱炎・尿結石 | 肥満により動きにくくなることで、トイレの回数減少、運動不足、水分摂取量不足を招いて発症する恐れがある |
子猫の肥満チェック方法!
子猫の肥満は、体重を量る方法と見た目でチェックする方法があります。
それぞれのポイントを押さえておきましょう。
体重の量り方
子猫の健康管理には、毎日体重を量って記録することが大切です。
ミルクを飲む前や排泄をした後などタイミングを決めておき、同じ時間帯、同じ条件で体重測定しましょう。
子猫の体重測定には、細かい単位で測れるキッチンスケールやペット用の体重計を用意します。
動くと正確な体重が測りにくいため、カゴやケースに子猫を入れて量ると良いでしょう。
ちなみに、生後1ヶ月齢の子猫の体重が減ることは稀です。
基本的に下痢や嘔吐がなければ問題ありませんが、低月齢で体重減少を確認したら速やかに動物病院へいくようにしましょう。
見た目でチェックする方法
体重だけでは肥満かどうかを判断しにくいため、『ボディ・コンディション・スコア(BCS)』という方法も取り入れてみましょう。
ボディ・コンディション・スコアは、見た目や触り心地で体型を5段階で評価するものです。(※成猫の基準をもとに作成)
チェックポイントは以下の3つです。
- 立っている子猫を横から見て、お腹のへこみの様子を確認する
- 真上から見て、腰のくびれの様子を確認する
- 胸や脇腹を軽く触り、骨の触れ方を確認する
BCS1:痩せ | ・お腹のへこみが顕著 ・脇腹のひだに脂肪がないまたはひだ自体がない ・首が細く、上から見たとき腰が深くくびれている ・肋骨・腰椎・骨盤が外から容易に見えている |
---|---|
BCS2:やや痩せ | ・お腹のへこみがわずか ・上から見たとき腰が少しくびれている ・触ったときに背骨と肋骨が容易に触れる |
BCS3:理想的 | ・お腹のへこみがあり、脇腹にひだがある ・上から見たとき、肋骨の後ろに腰のくびれがわずかにある ・触ったときに肋骨は触れるが、見ることはできない |
BCS4:やや肥満 | ・お腹のへこみがやや丸く、脇腹が窪んでいる ・脇腹のひだは適量の脂肪で垂れ下がり、歩くと揺れる ・肋骨の上にわずかに脂肪がついているが、肋骨は容易に触れる |
BCS5:肥満 | ・お腹のへこみが丸い上から見たとき腰のくびれがほとんどない ・脇腹のひだが目立ち、歩くと盛んに揺れる ・肋骨や背骨が厚い脂肪に覆われていて、容易に触れない |
子猫の体重が増えない場合の対処法
子猫の体重が増えない場合、食事量が少なくて摂取カロリーが不足している可能性があります。
子猫は胃が小さくて一度にたくさんの量を食べられません。
食べ残している場合は、一回の食事量を減らして回数を増やしてみましょう。
フードの種類や食器を変える、直接口に入れてあげるといった方法で食事を促すのも良いでしょう。
ただし、下痢や嘔吐の症状があれば、病気やストレスが関わっている可能性もあります。
カロリー不足以外にも消化不良や水過多、脱水による体調不良の可能性も考えられますので、子猫の体重が増えないときは、一度かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
子猫(7〜8ヶ月)の体重が増えすぎている場合の対処法
子猫の体重が増えすぎている場合は、肥満を解消するために適正な食事量を見直して運動をさせることが大切です。
「フードは目分量で与えている」という人は、毎回きちんと量るようにしましょう。
他にも、低カロリーのフードに切り替える、おやつを減らすといった方法があります。
食事の管理とあわせて適度な運動をさせてあげると、体重が減少しやすくなります。
成猫のダイエットのほとんどは食事管理が重要です。
もちろん運動も大事なのですが、いくら運動をさせても食事管理ができていないと体重減量しにくい傾向があります。
とはいえ、急激な減量は肝リピドーシスや他の疾患のリスクを伴うので、毎月5%未満程度の減量が目安です。
必要な食事量や運動量は個体差があるため、かかりつけの動物病院に相談して調整すると良いでしょう。
不調がある、他の症状があるといった場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
子猫が健やかに成長するよう全力を尽くそう!
子猫にすくすくと育ってもらうには、成長に合わせた食事を与えることが大切です。
可愛いからといって必要以上に食事やおやつを与えず、定期的に子猫の体重や体格を把握して、しっかりと健康管理をしてあげましょう。
体重の増減があるときは病気が関わっている可能性もあるため、動物病院を受診することをおすすめします。
日常生活のケアで対処できる場合は、今回紹介した方法を参考にして子猫が健やかに成長するよう全力を尽くしましょう。
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