「愛犬の目が白く濁っているように感じる」

「物にぶつかるようになった」

このような状態が見られたら、白内障の症状かもしれません。

白内障は高齢の犬に多い病気というイメージを持っている人もいますが、遺伝によってかかりやすい犬種もいます。

そのため、若い頃に発症するケースも少なくありません。

白内障は早期発見や早期治療が重要な病気のため、症状や原因などを把握しておきましょう。

今回の記事では、犬の白内障の特徴や症状、原因、治療法などについて詳しく解説します。

監修医師 アジア獣医皮膚科専門医レジデント   天辻 弾
天辻弾

天辻 弾

アジア獣医皮膚科専門医レジデント 
フリーランス獣医師
約10年の小動物臨床を経て、現在は皮膚科医としての診療業務の他、動物に携わる様々な仕事に従事。

天辻先生の監修した記事一覧
https://woofwoof.jp/specialist/specialist-1399/

<この記事でわかること>
  • 白内障という病気について
  • 白内障にかかりやすい犬種
  • 症状別のステージ
  • 白内障の原因
  • 白内障の検査、治療、予防法
目次

犬の白内障とは?

水晶体

目の中には、カメラのレンズと同じようにピントを調節する水晶体という器官があります。

水晶体は透明でラグビーボールのような形をしているのが特徴です。

白内障は何らかの原因で水晶体のタンパク質が変性し、白く濁って視力が低下する病気です。

一度変性したタンパク質は元に戻ることはなく、進行すると失明することがあります。

【「核硬化症」と間違えやすいので要注意】
「核硬化症(かくこうかしょう)」は水晶体の核が硬くなり、黒目が青白く見える老化現象です。
視力に影響はないので日常生活への影響はなく、治療も必要ありません。
ただし、白内障と核硬化症は見分けるのが難しいため、目に異変があるときは自己判断せずに獣医師に相談しましょう。

白内障にかかりやすい犬種

白内障の原因は多岐にわたりますが、遺伝によってかかりやすい犬種があります。

【白内障にかかりやすい犬種】
  • トイプードル
  • アメリカンコッカースパニエル
  • チワワ
  • 柴犬
  • ミニチュアシュナウザー
  • ボストンテリア
  • ヨークシャテリア
  • マルチーズ
  • キャバリア
  • ビーグル
  • ミニチュアピンシャー
  • ジャックラッセルテリア
  • イタリアングレーハウンド
  • シベリアンハスキー
  • ビションフリーゼ
  • ダックスフンド
  • ヨークシャーテリア‥など

【犬の白内障】症状別の4つのステージ

白内障

白内障は、混濁(こんだく)の度合いによって4つのステージに分けられます。

それぞれの症状を確認してみましょう。

初発白内障

水晶体の15%以下が濁っている状態です。

初期段階の白内障で、視力にはほとんど影響がありません。

わずかに濁っている程度なので、この段階で白内障の発症に気づくのは難しいでしょう。

未熟白内障

水晶体の15%以上が濁っている状態です。

濁っている範囲が広がって、視界がぼやける、かすむなどの症状が現れ始めます。

目が見えづらくなるため、暗い場所で動きが鈍くなったり、夜の散歩で歩くのを嫌がったりすることがあります。

成熟白内障

水晶体全体(100%)が白く濁った状態です。

光に対して反応することはありますが、視力はほとんどなくなり、物にぶつかる、はいつくばる、動きが慎重になるなどの症状が現れます。

目が見えない恐怖心や不安から、攻撃的になることもあります。

成熟白内障まで進行すると、ぶどう膜炎や緑内障、網膜剥離、水晶体脱臼などの合併症のリスクが高まります。

過熟白内障

白内障の最終段階で、水晶体のタンパク質が液状化して溶け出している状態です。

水晶体の厚みが減る、水晶体が硬くなるなどの症状が現れ、失明リスクが高まります。

水晶体のタンパク質が漏れ出すことでタンパク質起因性ぶどう膜炎を発症し、さらに緑内障や網膜隔離を引き起こす場合があります。

犬が白内障を患う原因はさまざま

犬の白内障は、さまざまなことが原因となることがわかっています。

ここでは、代表的な白内障の原因をチェックしてみましょう。

【遺伝性白内障】

白内障の原因で最もよく認められるのはこの遺伝性白内障です。

遺伝で白内障にかかりやすい犬種は多く、遺伝性の場合は若い年齢(6歳未満)で発症することが少なくありません。

若年性白内障は進行が早く、1週間程度で重症化してしまうケースもあります。

白内障にかかりやすい犬種の場合は、若いうちから定期的に眼科で検診を受けることが大切です。

【続発性白内障】

主な原因としては、ぶどう膜炎という虹彩の炎症に続いて起こることが多いです。また進行性網膜萎縮などの遺伝性疾患を発症した場合も白内障を併発することがあると報告されています。

【代謝性白内障】

糖尿病や甲状腺機能低下症、クッシング症候群、低カルシウム血症などの全身の病気が原因となります。とくに、糖尿病は白内障を発症するリスクがとても高く、さらに進行が早いのが特徴です。

中年齢以降で両目共に白内障を発症し、その進行が早い場合には糖尿病を疑って血液検査(血糖値)をしてもらうことをおすすめします。

【外傷性白内障】

喧嘩や植え込みに目をぶつけたなどによる外傷が原因で、白内障が発症することがあります。片側だけに症状が出る場合は外傷を原因として疑うことがあります。

【加齢性白内障】

加齢も原因のひとつで、年を取ると白内障を発症しやすくなります。

【中毒性白内障】

治療で使用している薬も、白内障を患う原因の一つです。

代表的な薬は、ジメチルスルホキシド、ジアゾキシド、ケトコナゾール、プロゲステロンなどで、使用を中止すると症状が治まる場合があります。

犬の白内障の検査、治療法、予防法

ここでは、犬の白内障の検査・治療法・予防法について解説します。

検査

白内障の疑いがあるときは、「スリットランプ」という特殊なライトで角膜や水晶体の状態を確認して診断をします。

この検査を用いて、肉眼では見ることのできない変化を観察することができるため、初期段階の白内障も発見することができます。

治療法

白内障の治療法は、大きく分けて外科治療と内科治療に分けることができます。

治療法概要メリットデメリット適応例
内科的治療点眼薬やサプリメントで白内障の進行を遅らせる・体への負担が少ない
・費用が比較的安価である
・進行を遅らせることが目標
・あくまで対症療法である
・効果が出るまでに時間がかかる
・初期段階の白内障 
・高齢犬で手術が難しい場合
・麻酔をかけての処置を避けたい場合
外科的治療濁った水晶体を除去し、人工レンズを挿入する・白内障を根本的に治療できる 
・視力回復の可能性が高い
・合併症の可能性がある (緑内障、網膜剥離など)
・麻酔をかけること
・術後のケアが必要
・費用が高価である
・白内障が進行し、視力障害が著しい場合 
・根治(視力の回復)を望む場合

【内科的治療法】

内科的治療法は、主に点眼薬や内服薬(サプリメント)を処方し、白内障の進行を抑える治療法です。

  • 点眼薬:一般的に、水晶体のタンパク質の変性を防止するピレノキシン製剤を使用します。
  • 内服薬:抗酸化作用のあるアスタキサンチンなど、目の健康維持に効果が期待できる成分を配合したサプリメントを使用します。

内科的治療法はあくまでも進行を遅らせるのが目的で、完治させることはできません。

高齢発症で、麻酔のリスクを回避したい場合や「初発白内障」や「未熟白内障」など、症状の軽度な段階で選ぶことが多い治療法です。

【外科的治療法】

外科的治療法は、外科用顕微鏡や専門的な機器を使って濁った水晶体を吸い取り、犬用の人工レンズを入れて視覚を回復させる治療法です。

白内障を根本的に治すには外科手術が必要ですが、網膜や視神経などに障害がある状態だと手術をしても視力は戻りません。

そのため、手術を望む場合は、網膜や視神経などに異常がないか、術後に視覚回復が期待できるかなどを検査します。

犬の白内障手術は合併症のリスクが高く、術後に緑内障や網膜剥離などが起こる可能性も考えられます。

全身麻酔のリスクがある、術後のケアや定期的な検査が必要になる、費用がかかるといったデメリットもあるため、総合的に見て手術をするかどうかを判断することが重要です。

予防法

日常生活での予防法は「眼に傷がつかないように気をつける」「長時間強い紫外線を浴びさせない」「抗酸化作用のある食事やサプリメントを与える」などの対策を上げることができます。

しかし、犬の白内障は遺伝的な原因で発症することが多く、確実な予防方法や予防薬はありません。

愛犬の眼が白いと感じた時には、白内障が進行していることもあります。

早期発見のためにも、動物病院で定期的に健康診断を受けることが大切です。

犬の白内障は適切な治療が必要!

白内障の多くは「遺伝性」ですが、「加齢」「外傷(怪我)」「全身の病気」などさまざまなことが原因となって発症します。

進行すると合併症や失明のリスクが高まるので、早期発見をして適切な治療を受けることが大切です。

初期の段階で飼い主が白内障に気づくのは困難なため、定期的に眼科検診を含む健康診断を受けるのがおすすめです。

異変を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。

#犬の白内障 #犬の目の病気

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